2月5日放送の日テレ系「スッキリ」で、ロフトのバレンタイン広告の一件が紹介されました。
賛否両論が沸き起こっている問題を、
テレビの情報バラエティが取り上げたわけですが、
その内容は少しモヤモヤしてしまうものでした。
「スッキリ」ではどのように紹介されたのか、振り返ります。
また、ロフトのバレンタイン広告について、実際にはどのような意見が寄せられていたのか。
問題の本質はどこにあったのか。
そちらも一緒に考えてみます。
記事中は敬称略。
どのような案件だったのか
まず、そもそもどういうことが起きていたのか。
今回の時系列
ロフトがバレンタイン広告キャンペーンを展開。
↓
キャンペーンの動画をWEB上に掲載。
↓
動画の内容について批判の声が上がる。
ロフト公式のTwitterアカウントには、批判的な返信が200件以上ありました。
↓
ロフト公式がTwitterで謝罪し、ビジュアルを取り下げる。
弊社バレンタインプロモーションのビジュアルについて、ご不快な思いをされた方々がいらっしゃったこと、深くお詫び申し上げます。配慮を欠いた事を反省し、当該ビジュアルの掲出を停止致します。お客様並びに関係した多くの皆様にご迷惑をおかけしたことを謹んでお詫び申し上げます。
株式会社ロフト— ロフト公式 (@LOFT_Official) February 4, 2019
どのような広告だったのか
すでにいくつかのメディアで紹介されていますので、そのリンクを貼っておきます。
広告の内容をご存じない方は先にこちらをご覧ください。
ロフトのバレンタイン広告が物議で取り下げに。「女は陰湿という考えが透けて見える」「なんの意図?」
スッキリでの取り上げ方
2月5日放送の「スッキリ」で、どのようにこの一件が紹介されたのか、振り返ってみましょう。
大きく分けて、前半は問題を説明したVTR、後半はスタジオトークという構成でした。
前半の解説VTR
上記の時系列を紹介
まずはVTRが流れ、一連の流れを振り返りました。
さきほどの時系列に沿って、
批判を受けた動画を放送
「あなたはどう思いますか?」と問いかけながら、問題となった動画の編集バージョンを放送。
省略はされていましたが、動画の趣旨は伝わる内容でした。
緊急調査「この広告は不快?」街頭アンケート
番組は、10代〜20代の女性に街頭インタビューし、問題の広告に「問題ありor問題なし」の調査を行いました。
CMまたぎの前に、
「それは意外な結果でした」
というナレーションを入れています。
調査方法は、5人の女子が並ぶキービジュアルの、前面と背面を見せて、感想を聞く、というもの。
問題となった動画を見せたわけではありません。
問題あり、問題なし、それぞれの意見をピックアップしていました。
「問題あり」と答えた人のコメント紹介
・正面だけならかわいい、後ろ姿は別に無くてもいいんじゃないかな。
・実際こんなことあまりない。これだけじゃただの女の子のケンカに見える。
・髪の毛とかスカートをめくるのはやりすぎ。みんなが女子たちのひとつひとつの言葉が全部偽りのように聞こえちゃう、悪意がこもりすぎかな。いろんなかたちが友情にはあると思うので。女子が全部こうみたいな偏見はある動画かなと思います。
「問題あり」な意見のまとめとして、
「女性の友情はうわべだけ、陰では足の引っ張り合い。女性に対する偏見ではないか」
とのこと。
「問題なし」と答えた人のコメント紹介
・別にそんなに私は気にならない。
・仲いいのかなって感じもある。
・髪つかむとかって仲良くないとできないよね。
・女の戦いが裏で行われている的なやつ。おもしろ怖い。
ここで、問題ありのときにはなかった、ディレクターからの質問の音声が流れ、テロップも表示されます。
(回答の女性)「悪くはない。女子の本当の裏の顔みたいな。実際こうだし」
(回答の女性)「やりすぎじゃないですか」
「問題なし」な意見のまとめとして、
「仲の良さが見える、ユーモアを感じる」
とのこと。
アンケートの結果
124人を調査した結果は、
問題あり 24人
問題なし 100人
だったそうです。
有識者からのコメント紹介
「ロフト側は広告の取り下げを決めたが、なぜこんなことになったのか?」
とのナレーションのあと、月刊「宣伝会議」谷口優編集長のコメントを紹介していました。
要約として、コメントの合間に流れたナレーションをそのまま書き起こします。
N「企業イメージとかけ離れた広告の内容だったことも批判が相次いだ原因と指摘します。また、ネット社会の中で、企業側の広告制作は、難しい環境になっているとも言います」
VTRのまとめ
VTRは、このようなナレーションで締めます。
N「批判の声を受けて、動画を削除した今回の広告。はたして、みなさんはどう感じますか?」
スッキリのVTRでの主張は……
VTRでは、問題ないと考える女性の意見を強調していました。
また、街頭インタビューの結果によって「問題ありと思う女性は少数派」である、ということも示しています。
締めのナレーションは問いかけで終わっているものの、スッキリのVTRは、この広告を問題ありと思う人は少ない、という主張が強かったと思います。
後半のスタジオトークに使われたVTR内容を書いたボードでも、アンケート結果の棒グラフが描かれ「問題なしがかなり多い」という情報を補強していました。
後半のスタジオトーク
VTRを受けてのスタジオトークとなります。
すべてをテキストに起こしましたが、かなりの長さになるため、この記事ではいくつかのポイントに絞って触れていきます。
スタジオトークで目立ったのは、まず番組CMである加藤浩次のコメントでした。
加藤浩次は、広告のキャラは一般的な女性を示したものとは思えなかった、とのこと。その点に触れた発言を抜き出してみます。
加藤浩次のコメントをピックアップ
加藤: まあだから……何にクレームつけてるのかちょっとわかりませんけどね。
加藤: これね、僕が思うのは、こういった同じ格好同じ髪型してる5人のユニットで、これは、一般的な女子を表現してるものではないって、僕はまず捉えて。
加藤: まあだから、そこの議論より、ってことですよ。これが女性蔑視にあたるか、だから。ここの評価はそれこそそれぞれ分かれるから、そこはまあ置いといて。これ、このユニットが、そういうことをしてて、そういうキャラクターでやってることが、一般的な女性蔑視にあたるのか、というところですよ。僕が言いたいのは。そこはどうなのか、って言う。
加藤: いやこれ見て、女性が、全員こうだって思う人いるのかな?(笑)
加藤: 表面ではこう言って、って、まあ言ったら昔からある、女性のあるある軍団のユニットでしょ? そういうユニットを描いているだけで。
加藤: 一般的にこのキャラクターをあてて、って。こんな格好してこんな髪してるやつが一般的か?
広告の女性は、一般的な女性の象徴なのか?
加藤浩次は、この広告の女性を見て、一般的な女性を示しているものとは思えなかったとのこと。
さらに、一般的な女性像だと思ってしまう人なんているのかな、という意見です。
そんな加藤浩次に対して、近藤春菜が「そう思っちゃう人もいるんですよ、私はそうは思いませんけれど」というフォローをしていました。
同様のフォローは水卜アナもしています。
番組の空気として、MCに反対意見を言いづらく、また同調しないといけないのは、いろいろと事情があることだとは思います。
ただ個人的には「一般的な女性像なのかどうか」にトークが集中してしまったのは、残念でした。
今回の件の本質は、そこではないと考えるからです。
スッキリの主張は?
スッキリは情報バラエティですので、ある程度は主張を込めて情報を届けるコンテンツです。
今回の件については、明言こそしていませんが、主張を込めたコンテンツ作りだったと思います。
スッキリが描いた「少数派のクレーマーが、ロフトを謝らせた」という構図
VTRでは、一般女性の言葉を借りて「広告はとくに問題ない」という意見を強調。
アンケート結果の24対100という数字を見せて、大きな棒グラフを作って、大差を強調。
スタジオトークでは、コメンテーターが「広告の女性は一般的なものを示しているとは思えない」と口を揃えました。
また、高橋真麻が「ノイジーマイノリティーの言ってることだと思いますけどね」など、少数派の意見には耳を貸すべきではない、という論調も多く見られました。
スッキリとしては、この一件を、
「少数派が声を荒らげて、クレーマーとなり、ロフトという大きな企業を謝罪させ、広告を取り下げさせた」という構図に見せたかったのだと思います。
建設的な意見もあったが……
ロバート・キャンベルが、「日本でエッジって言うと、陥れるというか、最後は誰かが嫌な気持ちになることが、日本のシニカルなCMというのは、結構よくあるんですよね。ちょっとそこは僕は残念というか、やっぱり表現としてはそもそも上手くないって感じるんです」という意見を述べていましたが、それもスタジオの空気にかき消された印象です。
情報バラエティはわかりやすさを優先する
朝の情報バラエティは、どうしてもわかりやすさを優先する傾向にあります。
そのわかりやすさは、ときにはっきりとした”悪者”を作り出そうとします。
今回の一件では、「ネットの少数派」を悪者とすることで、視聴者にわかりやすく伝えようとしたのかもしれません。
しかしここで疑問が湧きます。
ネットの少数派というだけで、彼らを簡単に切り捨てていいのでしょうか。
本当に、彼らの意見は聞くに値しないのことでしょうか。
ネットの少数派はロフトに何を言ったのか?
この問題は、SNSを通じて、ロフトに多くの意見が寄せられたことに始まっています。
そもそも一番多かった批判は何か?
Twitterなどを中心に沸き起こった今回の騒動。
ロフトに対しての批判的な意見を改めて読み返してみました。
まず大前提として、ロフトに対しての意見のほとんどが、「広告の意図がわからない」という内容だったこと。
女性蔑視を匂わせるような内容を、購買層が女性であるバレンタインのキャンペーンに、女性蔑視を匂わせるような内容にしたけど、その意図がわからない、という意見です。
広告を取り下げろ、という直接的な意見はほとんど見られません。
便乗して企業を叩きたい人もいた
いわゆる炎上の臭いをかぎつけて、ここぞとばかりに企業を叩く人も一定数います。
どこまでが便乗で、どこまでが本心かはわかりませんが、端的に「もうロフトで買わない」との返信をしていた人の中には、ただ企業を叩きたいだけの人も少なからずいたと思います。
ふたつの女性蔑視への意見
そんな中でも、女性蔑視について、真面目に論じている意見もありました。
細かくひとつひとつ読んでいくと、人によって論点が違うことがわかってきました。
今回のロフトの広告については、大まかに分けてふたつの論点があります。
女性蔑視の広告だ、と怒る人
広告で描かれた女性を、一般的な女性像として受け止めた上で、「広告が女性を蔑視している」という意見です。
私たち女性はこんなに愚かではない、と怒っている。
これについては、広告の女性を一般的な女性の象徴と思うかどうか、受け止め方の違いが絡んできます。
スッキリでも、「ネットの少数派が広告を見て、女性蔑視だと怒っている」というところで止まっていたように思います。
しかし、もう少し踏み込んだところに、怒りを覚えていた人もいるのです。
こんな広告を作り出す企業の意識にモノ申す人
女性をターゲットにしているのに、女性蔑視と受け止められかねない内容で広告を作った”企業意識”に、問題提起をしている人たちです。
もちろん、ロフトだけでなく、広告を作った広告代理店も対象です。
この広告が、一部のことか、一般的かはさておき、「表では仲良しだけど裏ではギスギスしている女子」を描いているのは間違いありません。
こういったセンシティブな素材を、バレンタインの広告として作った人たちの意識。
これで、女性の支持を得られると思った意識。
そこに疑問を呈しているのです。
単純に、広告に怒っているのではありません。
もちろん、こういった意見も賛否両論あるものです。
しかし、それらにスポットがあたることは無く、
「少数派クレーマーvs大企業」という構図で片付けてられてしまいました。
切り捨てられた「ネット少数派」
今回のスッキリでは、ネットの少数派が悪者として扱われました。
少数派へのステレオタイプ
ネットの少数派の言うことには価値がないと決めつける。
これも、ひとつのステレオタイプです。
便乗して騒いだだけの人もいました。
しかし、ネットの少数派にも、きちんとした意見はあります。
ネット少数派の意見は相手にする必要ない、と簡単に片付けずに、彼らは何に怒っていたのか、一度向き合ってから判断しても良いのではないでしょうか。
今回のまとめ方は残念
情報バラエティとしては、誰かを断罪したほうが明快で視聴者ウケが良い、という事情もわかります。
しかし、それは叩きやすいところを叩きがちですし、それこそうわべだけを見つめた結果になりやすいのではないでしょうか。
「それほど問題がない広告に対して、一部の人が過剰に反応しただけ」
「少数派のクレーマーが愉快犯となって、大企業を困らせただけ」
テレビの情報バラエティがこういった構図にはめ込み、少数派を切り捨てたことは、残念に思います。
女性蔑視について考えよう
今回の一件で、女性蔑視とは何か、問題はどこにあるのか、考えさせられるきっかけになりました。
こうやってテレビなどで取り上げられることで、考えるきっかけが増えることは、社会的には長い目で見てプラスだったと思います。
簡単に批判できるのはネットの悪さと言われますが、様々な意見に触れられることはネットの良さでもあります。
あなたは、ロフトのバレンタイン広告を見て、どう感じたでしょうか。
他の人の意見を見て、どう感じますか?
今回の件をきっかけに、女性蔑視問題について多様な意見があることを知りました。
多様な意見を踏まえて、改めて、考えてみませんか。