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映画「ボヘミアン・ラプソディ」感想。伝記映画の難しさ、なぜ叩かれてしまうのか。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見てきました。

劇場で何度か予告編を見ても興味はあまりありませんでしたが、伝説となる「ライブ・エイド」のパフォーマンスを再現していると知って……。
これは劇場で見るべき、大きくて、良い音響のスクリーンで見たほうがいい、と思い立ち、公開2週目に見てきました。

ネタバレ無しの感想と考察です。

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大きなスクリーンで見たい!

僕のQUEENレベル

実在のバンドの伝記映画なので、元のバンドをどれだけ知っているかで、ある程度評価が変わる作品だと思います。
僕は、10代後半でQUEENのベストアルバムと出会い、そこから数枚アルバムを買って、聴きまくった時期がありました。
なので、有名な曲と、その他を少し知っているレベルです。

「ライブ・エイド」の再現

見に行こう、と思ったきっかけが、1985年にロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われた「ライブ・エイド」の再現があると知ったこと。ここでQUEENは歴史に残るパフォーマンスを残したとされています。僕はその映像を見たことがなかったのですが、そのシーンだけでもとにかく見たい!と思ったのです。

大きくて、音響の良いスクリーンで見たい

TOHOシネマズ新宿で見ることが多いのですが、音響の良いスクリーンだと「IMAX(+500円)」か、「TCX & ドルビーアトモス(+200円)」のどちらかになります。スクリーンの大きさと音響はどちらも申し分ありません。僕が見に行った日は、IMAXが1日に2回上映、TCXが1日に5回上映だったので、時間の合うTCXに決めました。

急いで行ったのは、11月23日から「ファンタスティック・ビースト」の最新作が公開され、IMAXもTCXもそちらに使われてしまうからです。

ライブ・エイドでボロ泣き

まずはざっくり感想

あらすじや、細かい解説は他のサイトに任せるとしまして、個人的に感動した点をネタバレ無しで箇条書きします。
・冒頭、20世紀FOXのファンファーレでいきなり心掴まれる。
・まずライブ・エイド直前のシーンから始まり、そこからQUEEN結成のエピソードへと繋ぐ構成。
・フレディ役のラミ・マレックの演技すごい、とくに後半からは、シーンによってはフレディ本人に見えてしまうほど。
・ギターのブライアン・メイは似すぎ。ナイスキャスティング。
・ランプ、シャンパングラス、切ない。

ライブ・エイドの迫力……!

これは期待以上でした!
頭の片隅でCGだよねと思いつつも、10万人の大観衆の映像は鳥肌もの。QUEENの楽曲の良さはもちろん、フレディのパフォーマンスに見入ってしまう感覚は、ライブをリアルタイム中継で見ているようでした。ドルビーアトモスの効果なのか、観客の声もいたるところから聞こえてくるので、会場にいるような錯覚すらあります。ライブ・エイドの後半、とある有名曲を歌い始めたあたりで、なんだかよくわからない涙が出てきて、エンドロールまでずっと泣いていました。

本作へのよくある不満

個人的には大満足だったのですが、鑑賞後にいろいろネットで感想を見てみると、否定的な意見でよく見かけるものがありました。

時系列が史実と違う、という指摘

僕はQUEENの歴史をほとんど知らなかったので、この点はまったく気になりませんでした。
ただ、実際の出来事と、映画の物語には、かなり違いがあるのです。そこが気になってしまったとか、それはやってほしくなかった、というような意見をよく見かけました。

こんなに違う、映画と史実

ネタバレを含んでしまうので、すべて引用できませんが「ローリングストーン」のサイトでは10項目の史実との違いを挙げています。この記事の最後にリンクを貼っておきます。
すべて不満の対象として叩かれているわけではなく、一番不評なのはひとつの内容です。

もっとも不満を集めた改変とは

映画の中では、ライブ・エイドに向けたリハーサルの最中に、フレディはバンドのメンバーに「重大な告白」をします。これにより、メンバーは結束を強め、ライブ・エイドのシーンがより感動的なものになっているのは間違いありません。
しかし、実際はそんな告白はなかったのです。
ライブ・エイド直前のフレディは、映画で告白した内容なんてまったく知らなかった、というのが史実です。実際に知ったのはそのライブ・エイドの翌年以降と言われています。

この改変についてはかなりの注目度

Twitterでこれらの事実関係を詳しく解説したツイートは、1.3万件のリツイートもされており、いかにこの改変が批判されているかがうかがえます。ちなみのそのツイートにはネタバレを含むのでここには貼りません。
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伝記映画の改変はどこまで許されるのか?

映画「ボヘミアン・ラプソディ」には史実から改変されたエピソードがたくさんあります。

あまり叩かれていない改変もある

前述の「ローリングストーン」での指摘に「1970年の初コンサートのシーンに、まだ加入していなかったベーシストが演奏している」というものがあるのですが、これはあまり叩かれていません。

気づきづらい改変は叩かれない

気づく人が少ない改変であれば、そもそもそこまで話題にはなりません。フレディがリムジンの車内でスタッフに激怒して車から降ろすシーンがありますが、これも事実ではありません。実際にはもっと平和的な話し合いがあったそうです。そんな事実を知っているQUEENファンは少数でしょう。
さきほどのベーシストも同じようなことだと思います。

本人のお墨付きの部分も叩かれない

QUEENのメンバーだったブライアン・メイとロジャー・テイラーが、本作の音楽プロデューサーとして携わっています。当人たちの統括した部分ですから、作品内で流れる音楽や、ちょっとしたアレンジについて否定的な意見を見かけることはほとんどありません。

胸毛の少なさも叩かれない

フレディはとても毛深い人だったので、胸毛も結構ありました。本作で演じるラミ・マレックの容姿は、フレディの特徴的な歯並びは再現しているものの、胸毛の量はそこまででもありません。でも、そこをつついて「こんなのフレディじゃない!」と怒っている人も少ないと思います。

なぜフレディの「重大な告白」だけが叩かれるのか?

ここからは個人的な考察となります。
なぜフレディの「重大な告白」が大きく叩かれ、他の改変はそれほど叩かれないのでしょうか。

「重大な告白」で、より感動するから叩かれる

フレディがライブ・エイド直前に打ち明けることで、フレディはじめQUEENのメンバーが、どんな気持ちでライブ・エイドに挑んだのか。それを考えると、ライブ・エイドのシーンはより感動的なものとなります。しかし史実では、QUEENのメンバーはそのことについて何も知らずにライブをしていたわけです。

感動の水増しにはガッカリさせられる

史実を知らない観客は、告白の内容を受けてライブをやっていると見るので、「そんな思いであのライブを……!」と、とても感動します。しかし後になってそれが嘘だとわかってしまうと「あの感動は何だったの?」と思う人もいるでしょう。
古くからのファンで、重大な告白が時系列としておかしいと気づいた観客も、やはり「感動を強めるためにこうやって変えたんだな」と思うでしょうし、あまり好意的には受け取れないと思います。

「やらせ」は強く批難される

メディアのやらせ問題は以前からよく話題に上がります。とくに、感動を与える内容が実は仕込みだった、というケースは強く批難されます。
本作でも、映画感想ブログなどでは「フレディの重要なエピソードを捻じ曲げたのは許せない」という強めの意見が見られました。

感動を生み出すための改変はあり?なし?

時系列が違うと知っても楽しめた人も多い

ネットも一枚岩ではありませんので、多様な意見があります。
時系列が違うと知っても好意的な感想も多く見られます。

ライブ・エイドがすべてを吹っ飛ばす

細かいモヤモヤがどうでもよくなるライブ・エイド

この映画の魅力の80%は、最後のライブ・エイドのシーンに込められていると言ってもよいでしょう。とくに劇場で見たならなおさら感動したと思います。細かい史実とのズレなんてどうでも良くなるほどに、ライブ・エイドのシーンは感動的な場面になっています。もう大満足なのです。

すっごく感動しちゃったからそれでいいじゃん!

あれこれ細かい違いは気になるかもだけど、とにかく最後は感動した!
とにかく最後のライブ・エイドがすごかった!
……という感想は僕も同じです。

改変の是非ではなく、感動できるかどうか

もしライブ・エイドのシーンがつまらない仕上がりだったら、もっともっと叩かれていたでしょう。本作はあえて史実との違いを作り、感動を水増しさせたかもしれませんが、それを許せるだけのシーンを作りあげた。ライブ・エイドはそれほどに素晴らしい出来であり、見に行った人の多くが感動しています。
強い感動を与えてくれるのであれば、多少の改変は許されるのだと思います!

ぜひ劇場でご覧ください

年末までは劇場で上映があると思います。ぜひ劇場で見てもらいたい作品です!
応援上映にも行きたくなるかもしれませんよ……!

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余談・高田馬場のフレディ

深夜の馬場に響くコール・アンド・レスポンス

僕が「ボヘミアン・ラプソディ」を見た数日後。
深夜の高田馬場を歩いていると、酔っ払った大学生が4人、駅前で騒いでいました。
僕が脇を通り過ぎたときに、そのうちの一人が「エーーーーーーオ!」と叫んだのです。おそらく彼は、最近「ボヘミアン・ラプソディ」を見て、フレディの真似したくなったのでしょう。友人からのレスポンスはありませんが、続けて叫んでいました。
「エーーーオ!」
「エオ!」
「ティーロリロリロリロリロ!」

若い世代に繋がっていくQUEEN

どうしてフレディの真似をしたのか、酔っぱらいに聞いても理由はわからないでしょう。でも、大学生なりに、あのライブ・エイドでのフレディを「かっこいい」と思ったのではないでしょうか。
フレディ・マーキュリーという稀代のパフォーマーが、若い世代にも広まっていくのは、悪いことではないなあ……と思いながら、家路に着いたのでした。

参考記事

※ネタバレを含みます
クイーン自伝映画『ボヘミアン・ラプソディ』を事実検証

映画映画,映画感想

Posted by suisui