グレイヘアに移行できない女性、移行しない女性。その理由は?

2019-01-15

このごろ耳にするようになった「グレイヘア」という言葉。
テレビ番組で目にしたり、または流行語大賞のニュースで知った方も多いのではないでしょうか。

「グレイヘア」とは、白髪染めを使わず、白髪を活かしたヘアスタイルのこと。主に女性に対して使われることが多い表現です。
今年の流行として扱われ、何度もメディアで取り上げられますが、ネットの反応はあまり良いものではありません

白髪染めから解放してくれるはずのファッションに、どのような反発があるのでしょうか?

「グレイヘア」が今後受け入れられるためには、何が必要なのでしょうか?

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グレイヘアの今年の歩み

まずは2018年における、これまでの経緯を振り返ってみます。

4月4日「グレイヘアという選択」出版


「Ray」など、女性向けファッション紙を多数扱う「主婦の友社」が出版した書籍です。白髪染めをしない選択をした女性へのインタビュー、グレイヘアに似合うファッション、1年におよぶ白髪育てのレポートなどを掲載。この書籍が、今回のグレイヘア流行の火付け役になったと思われます。

5月4日、近藤サトがグレイヘアでテレビ出演

元フジテレビアナウンサーの近藤サトさん(当時49才)が、フジテレビの「バイキング」にコメンテーターとして出演。そのときのヘアスタイルがかなりの白髪交じりだったため、Twitterなどでは「どうしちゃったの?」など、ざわざわとした感想があふれました。
これ以降、彼女には取材が殺到することになります。

6月6日、NHK「ひるまえほっと」にて紹介


「グレイヘアという選択」の編集者や、実際にグレイヘアで過ごしている方へのインタビュー、グレイヘアオフ会の様子を紹介。

7月12日、「「グレイヘア」美マダムへの道: 染めるのやめたら自由になった!」出版


一年間かけてグレイヘアに移行した女性ライター、朝倉真弓さんの著書。実体験を元にした内容です。

7月18日、フジテレビ「ノンストップ!」にて紹介

「近藤サトさん 50歳白髪染めをやめたワケ」という特集で、近藤サトさんへのインタビューなどを紹介。

9月14日、朝日新聞に近藤サトさんのインタビュー記事掲載。


白髪染めをやめたいきさつなどをインタビューしています。

インタビュー動画も公開。

10月18日、「グレイヘアの美しい人」出版


主婦の友社が再びグレイヘア本を出版。近藤サトさん、手塚理美さんなど、グレイヘアを選択した有名人女性へのインタビューや、グレイヘアのおしゃれテクニックなどを掲載。

10月24日、NHK「おはよう日本」で紹介

“グレイヘア” で自分らしく | おはよう日本 関東甲信越 | @首都圏 | NHK
グレイヘアを選んだ女性へのインタビューを紹介。

10月24日、「おしゃれにグレイヘア 染めない選択で美しく!」出版


「家庭画報」などを出版している世界文化社のグレイヘア本です。中尾ミエさんなど4人が結成した「チーム ソルトン セサミ」が表紙。グレイヘアに移行するためのお悩み解消方法などを掲載。

11月7日、流行語大賞にノミネート


年末恒例、「ユーキャン新語・流行語大賞」 「グレイヘア」がノミネート。ノミネートした言葉の一覧などをメディアが取り上げたため、ここでかなり知名度が上がったと思われます。こちらのニュースでも近藤サトさんがグレイヘアの象徴に。

11月24日、NHK「助けて!きわめびと」で紹介


グレイヘアの実践者、ライターの朝倉真弓さんのガイドで、グレイヘアに移行・完成させるまでのコツや、グレイヘアの魅力を紹介。

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ネガティブなネットの反応

11月24日放送の「助けて!きわめびと」において、ネットではネガティブな感想が多く見られました。

Twitterにはこんな感想がありました


美人だから似合う
https://twitter.com/lalaland08159/status/1066131740408766464?s=21
グレイヘアにする自信はない


老けて見えたら元も子もない


綺麗なのは黒髪


周りから反対される

もちろん好意的な意見もありました


https://twitter.com/crorvlion/status/1066130117582188544?s=21
番組を見てグレイヘアに憧れた人もいました

ネガティブな意見をまとめてみると

意見の傾向としては、4パターンあります。
・美人だから似合う、私がやっても似合わない
・老けて見られる
・染めた方がきちんとした人に見られる
・染めてる方が綺麗

お役立ち情報にはなれなかったグレイヘア特集

「助けて!きわめびと」では、白髪染めをやめる難しさをどう乗り越えるか、グレイヘアに移行するときのコツなどを紹介。グレイヘアのハードルを下げようとする姿勢を感じました。
そもそもこの番組は、視聴者から寄せられた悩みを解決する手法や、生活お役立ち情報を紹介する番組です。過去の放送では、美容カテゴリだと
「たるみ解消エクササイズ」
「老け顔解消トレーニング」
「おばさんくさいメーク救出大作戦」
などをテーマにしていました。これらは興味深く見た人も多かったと思います。
しかしグレイヘア特集では、「役に立った!」というコメントは少数派。皆どこか冷めた様子で、グレイヘアは自分と無縁のものとして見ている人が多かったのです。

グレイヘアの現在地

現状は、メディアの紹介を通してグレイヘアの旗を降っても、ついてくる人がほとんどいない。むしろ少し離れて旗を見つめています。
素敵な選択肢のはずなのに、なぜなのでしょうか。

習慣を捨てさせる難しさ

原因のひとつは、やはりグレイヘアはまだまだ現実離れのファッションということなのでしょう。白髪染めからグレイヘアへの移行は、単なる「新しいことへのチャレンジ」だけではありません。「今やっている習慣をやめて、違うファッションにしませんか」という提案なのです。これに乗っかるには相当の覚悟と勇気が必要です。また、家族や友人から反対されることも多かったり、職種によっては白髪を染めるしかないなど、環境からの反対もあります。

価値観を変えさせる難しさ

そもそも、白髪のほうが老けて見えると感じる人や、できるだけ若くありたいという思う人が大半でしょう。その価値観をひっくり返すのは相当難しいことだと思われます。

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白髪染め派vsグレイヘア派!?

白髪染めは「時代遅れ」か

グレイヘアのアイコンとして、たくさんの取材を受ける近藤サトさん。彼女のインタビューの中に、こんな言葉がありました。

近藤サト「年齢に抗わないのは、若さにしがみつかないということ。若さにしがみつくのは“時代遅れ”だと思います。これまでいろんな経験を経て、それって馬鹿らしいなと思ったんです」
引用元:https://www.oricon.co.jp/special/51423/

これもなかなか、普通の人には言えないことです。若さにしがみつきたい人はたくさんいます。アンチエイジング商品は今でも売れ筋です。
しかしグレイヘアで老いを隠さない近藤サトさんにとって、若さにしがみつくのは時代遅れなのです。ここだけ聞くとあまりいい気分にならない人もいるでしょう。

白髪染め派とグレイヘア派の対立は良くない

ほとんどのファッションにはたくさんの選択肢があります。多少意見が違っても「人の好みはそれぞれだからね」で済みます。しかし白髪については、白髪を染めるか、グレイヘアにするかの二択しかありません。二択だと、片方を褒めた場合、もう片方をけなしているように聞こえる危険性があります。グレイヘアの良さを広めていくことで、結果的に「白髪染め派vsグレイヘア派」のような対立を作るのは、両者にとってあまりしあわせなことではありません。

行き過ぎたアピールは、白髪染め派を遠ざける

そもそも近藤サトさんの場合は、20代から白髪に悩まされ続け、20年以上白髪染めをしていた経緯があります。白髪染めまつわる苦労の体験が平均より長いので、「染めなければいけないという束縛から楽になった」と言うのもわかります。
しかし、近藤サトさんの言葉を一般化して「白髪染めは誰にとっても呪縛、束縛、悪い習慣」と表現するのは言い過ぎかと思います。「グレイヘアは解放、新しい自分の発見、人生が変わる」なども同様です。
白髪染め派を否定していると思われそうな表現は控えたほうが、お互い平穏に過ごせるのではないでしょうか。
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今後どうなる、グレイヘア

一発屋芸能人のように、今年だけ流行って終わるのか。
それとも、だんだんと定着し、ごく普通のファッションとして普及するのか。

マイノリティから普通になるために

グレイヘアは現状、かなりの少数派です。普通のこととして世間に浸透するには、しばらくかかりそうです。人々の意識や風習が変わるには長い時間が必要です。

静かに続けていくしかない

次に、現在のグレイヘアを選んだ人たちが今後も継続していくことが大切です。素敵なグレイヘアの女性を街で見かけることが増えれば、後に続く人もまた出てくるでしょう。流行扱いされて、メディアよって大宣伝されてしまったのは、もう仕方のないことです。今後は、こっちも素敵だよ〜!と旗を降るよりも、グレイヘアの女性が自然体で暮らしていれば十分なように思います。本当に良いことならば、自然と浸透してくはずです。

グレイヘアのコミュニティが無くなる日へ

現在、日本の各地にグレイヘアの小さなコミュニティがあり、オフ会的なイベントを開催しています。グレイヘアが当たり前になれば、こういったコミュニティは自然と無くなるでしょう。マイノリティでなくなれば、ロングヘアやショートヘアに並ぶ普通の髪型になるのですから。
そのような日が来ることを、ゆるく応援しています!

関連書籍

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Posted by suisui