「3年A組」から学ぶ、菅田将暉が演じる柊先生の作り方【日テレドラマ】【シナリオ分析】

2023-07-26

2019年1月期の日テレ系ドラマ、
「3年A組 −今から皆さんは、人質です−」。

学園ものにミステリーを組み合わせた、オリジナル脚本ドラマです。

菅田将暉が演じる教師「柊 一颯」が、クラスの生徒に学校の監禁し、人質にとって立てこもる。
彼が生徒に行う、最後の授業とは……。

第1話からインパクトの強いシーンが多く、ハラハラして見ていた人も多かったのではないでしょうか。

第1話の構成を振り返りつつ、
「柊 一颯」のキャラの立て方を解説します。

また、本作の重要な要素である、
「監禁」をどう成立させているかも見ていきます。

これまでの柊先生

第1話は3月10日のシーンから始まり、いきなり柊先生がとんでもないことをしますが、これはツカミの部分なので省略します。
時間は遡り、3月1日の朝、職員室のシーンから始まります。

同僚女性からの誘いに乗らない

堀田茜演じる森崎先生にしつこく食事に誘われるも、柊先生は冷たくあしらいます。
愛想笑いもしませんし、社交辞令などは言いません。同僚には無愛想で冷たいようです。

生徒から冷たくされている

廊下にて、柊先生がダンボール箱を台車で運んでいると、女子生徒にわざとダンボール箱の山を崩されます。
さらには、女子生徒から「ホームルーム遅刻すんなよ〜」をからかわれるのです。

生徒から暴力を受けている

柊先生がホームルームを始めようとすると、遅刻してきた男子生徒に蹴り飛ばされます。
その様子に、他の生徒は無関心。
つまり柊先生は、日常的に生徒からひどい扱いを受けており、とくに反抗もしていない、ということがわかります。

柊先生の武器とは

生徒の監禁が始まると、柊先生が別人のように変わります。

ケンカに強いという武器

片寄亮太演じる甲斐隼人に胸ぐらをつかまれるも、慣れた動きで逆に甲斐を押さえつけ、ポケットからバタフライナイフを奪い取ります。
甲斐の仲間が飛びかかるも、柊先生は蹴り技で反撃。二人とも倒してしまいます。

監禁成立へのポイント

男子生徒が戦っても歯が立ちません。
生徒が柊先生を倒すことは難しい、ということを視聴者に伝えています。

ふたつの意味を持つセリフ

ここでの柊先生のセリフが効いています。
「こう見えても昔は、アクション俳優を目指していたんだ」
このセリフは、柊先生が格闘に強いことの理由を説明しています。
さらには、菅田将暉がかつて「仮面ライダーW」でライダー役を演じていたことへのオマージュにもなっています。
わかる人はニヤリとしてしまうセリフです。

ナイフの扱いにも慣れている

さらに、甲斐を床に押し倒して馬乗りとなり、バタフライナイフを手際よく扱います。
「調子に乗ってるのはおまえのほうだ」
と、ナイフを甲斐の顔の近くに突き立てます。青ざめる生徒たち……。

爆弾という武器

柊先生は教壇の前に戻ると、
「どうやらまだ、状況が飲み込めていないようだな……。なら、これでどうだ」
左手にはめたスマートウォッチを操作すると、教室近くの廊下で爆発が起きます。これにより廊下が崩れ、教室は物理的に外と遮断。
生徒たちは監禁状態となります。

不気味な明るさ

生徒に、先生が爆発させたんですかと問われると、
「ピンポーン! あ、ちなみにね、その上にもまだあるよ」
と、軽いノリで回答。異常事態を楽しんでいるかのような明るい態度には、不気味さを覚えます。

前半は、ただのヤバイ教師

起立、礼、着席の強制

生徒たちに、監禁されていることと、いたるところに爆弾が置かれていることを説明し、それから携帯とカバン没収します。
チャイムが鳴ると、起立するように指示する柊先生。
しかし、生徒たちは誰も立とうとしません。
見かねた柊先生は、左手のスマートウォッチを生徒たちに見せます。
また爆破されては困る、と思った生徒たちが次々に立ち上がります。

監禁成立へのポイント

爆破されたくないので、指示に従う生徒たち。
生徒たちが柊先生の言いなりになるしかない、ということを視聴者に見せています。

柊先生からの問いかけ

生徒たちに、おまえたちはどうして人質にされたのか、わかるか?と問いかけます。
どうやら、上白石萌歌演じる景山澪奈という生徒が亡くなったことが関係しているようです。

なぜ、景山澪奈は死んでしまったのか?
その理由を夜8時までに導き出せたら、生徒全員を解放する。

ただし解答は一度きり。

不正解の場合、誰か一人死んでもらう。

そんな理不尽な要求を生徒たちに投げかけると、「Let’s think」と言い放ち、隣の美術準備室に引きこもります。
このセリフは今後、柊先生の決めゼリフとなるはずです。

もうひとつの決めゼリフ

携帯を隠し持っていた男子生徒を監視システムで発見し、携帯を没収。その後、男子生徒たちに、
……ゾクゾクさせてやるよ
と言います。
これも決めゼリフです。

警察への対応

到着した警察に対しては、邪魔をすると生徒たちの命の保証はないと伝え、実際にグラウンドの倉庫を爆破することで、ハッタリではないことを見せつけます。

ここまでの柊先生

ただのヤバイ教師です。

爆弾や監視カメラを大量に仕掛け、生徒を監禁し、歯向かう者には暴力を振るい、警察とも戦う姿勢を示し、生徒が問題に答えられなかったら一人殺す……。
繰り返しますが、ただのヤバイ教師です。

しかし終盤、解答のシーンで、もうひとつの顔が表れます。

生徒の成長を願う熱血先生

第1話の中盤は、永野芽郁が演じる茅野さくらの回想シーンが中心となって展開していきます。

茅野さくらの物語もあります

夜8時の解答のシーンでは、茅野さくらが自分の殻を破り、小さな成長を見せます。ここはさくらの見せ場です。

再び、生徒と戦うことに

複数の男子生徒に殴りかかられ、反撃するも、最終的には押さえ込まれる柊先生。
しかしスマートウォッチを操作し、教室の天井を爆破。
柊先生は立ち上がり、
「おまえら、これがあるってことを忘れるな」
とスマートウォッチを生徒たちに見せつけます。

監禁成立へのポイント

爆弾があるため、生徒は柊先生を制圧できません。
集団で押さえこんでも柊先生を止められない、という説明です。

クラスメイトを見捨てる生徒たち

生徒たちは、不正解のペナルティを茅野さくらに押し付けようとします。
これに対し、柊先生はあきれて笑い、そして怒ります。

説教のシーンだけ見ると……

ここだけを切り取ると、学園ドラマにありそうな、熱血先生のアツい説教にしか見えません。
涙を流しながら語りかける姿は、内容も相まって、感動的ですらあります。
視聴者に、
「あれ? なかなかいいこと言ってるし、生徒思いだな」
と思わせるシーンなのです。

これによって、ただのヤバイ先生ではなくなり、印象が複雑なものに変わります。

監禁成立への説明

このドラマでは、おそらく最終話まで生徒の監禁が続きます。
10日間、教室に生徒たちを監禁するとなると、リアリティを出すのが難しいのです。
それでも、長期間の監禁を成立させるために、いくつもの説明がされていました。

1. 物理的に出られない

2. 生徒は柊先生を倒せない

3. 警察は手が出せない

おおまかにはこの3点です。

突っ込みどころをあげたらキリがないという意見も、もちろんあると思います。

しかし、10日間の監禁にリアリティを出すために、何も説明しないわけにはいきませんので、第1話では何度も説明シーンが置かれています。

柊先生というキャラの立て方

第1話での、柊先生の立て方ををまとめます。

振り幅のある二面性

キャラには二面性を作るのが基本テクニックですが、「3年A組」の柊先生は、その振り幅が極端に大きくなっています。

・生徒の命すら奪おうとする、サイコな立てこもり犯

・倫理を尊重し、生徒の成長を何よりも願う、熱血教師

まったく正反対の、矛盾した性格を、一人の中にまとめているのです。

物語の前半だけでは、ただのヤバイキャラでしたが、第1話をすべて見終わると少し違う印象に変わったはずです。

主人公が単なるサイコな犯罪者ではなく、複雑なキャラであること。

これが「3年A組」というドラマの個性になっているのです。

主人公に必須の決めゼリフ

やはり主人公には決めゼリフがあるとキャラ立ちします。柊先生にはふたつ用意されています。

「Let’s think」

「ゾクゾクさせてやるよ」

この「ゾクゾク〜」も、仮面ライダーWへのオマージュとなっています。
というのも、仮面ライダーWでの菅田将暉の口ぐせが「ゾクゾクするねえ」だったのです。これも、わかる人には楽しんでもらえるスパイスになっています。

菅田将暉の演技力があってこそ

複雑なキャラクターなので、おそらく演じるのはとても大変なはずです。
しかし、そこは稀代のカメレオン俳優、菅田将暉
難しいキャラを、見事に演じきっていると思います。
彼の演技力があってこそ、成立しているキャラとも言えます。

伏線もたくさん、今後はどうなるのか?

ミステリーというだけあって、第1話からとてもたくさんの伏線が張られていました。
あわせて、たくさんの謎も散りばめられており、今後の展開が気になります。

最近では珍しい、原作なしのオリジナル脚本ドラマ。

ドラマを追うことでしか結末がわかりません。

柊先生の授業はどのような結末を迎えるのか……?

毎週ゾクゾクさせてくれることを期待します。

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