「ワールドトリガー」から学ぶ、キャラの作り方【三雲修 編】【シナリオ分析】

週刊少年ジャンプで2016年から休載していた「ワールドトリガー」。ついに連載再開しました!
近未来SFアクションを軸に、多くの登場人物を巧みに操るストーリー。アニメやゲームにもなった人気作です。
再開のお知らせに歓喜したファンも多いはず!

登場人物の多さが特徴的ですが、それぞれのキャラにしっかり個性を与えており、集団バトルの描写はとくに素晴らしい!

今回は本作の主人公の一人「三雲 修」のキャラの作り方を、漫画版の第1話から学びます。

なぜユーマからじゃなくて、オサムからなのか。
……それは、僕がそうするべきだと思ってるからだ!

本作は主人公が複数

公式設定は主人公4人

とりあえず第1話では、「三雲 修」と「空閑 遊真」の二人が主人公として登場。公式サイトの質問コーナーでは、作者の葦原先生が「主人公は4人」と回答しています。

でも実質はダブル主人公

とは言え、実質は修と遊真のダブル主人公で物語は進みます。漫画版の第1話で主に描かれるのは修と遊真ですし、キービジュアルなどでは二人だけのパターンもよく見ます。
連載再開の告知カット。

さらに言えば一人だけのキービジュアルになると遊真の方が比率が多くなりますので、修より遊真の方が「主人公」っぽい扱いをされています。
コミックス第1巻のカバーも遊真。

アニメ公式サイトのキービジュアルだとこんな配置。

ですが今回は修のキャラの立て方を見ていきます!

第1話の構成

第1話は55P。大まかなシーンごとに分けます。

1〜9P、世界の説明

舞台は三門市という小規模都市。ある日、異世界から侵略者が攻めてきたが、ボーダーという組織が街を守り、異世界との侵略から防衛を続けて4年経ちました……というようなことをテキストで説明しています。

10〜26P、修と遊真の出会い

修の中学校に、遊真が転校してきます。遊真は不良たちと小競り合い。

27〜33P、不良との小競り合い再び

帰宅途中、遊真は不良たちに絡まれ、修はそれを止めようとします。

34〜55P、ネイバー襲撃

不良たちとケンカの最中に突如ネイバーが出現。修と遊真、不良たちが襲われます。

修のキャラの立て方・前半

では要素ごとに、修のキャラの描き方を見ていきましょう。

クラスの中で浮いている

10P。本編が始まって最初に描かれる修の様子がこちら。

周りは仲良く友人と話しているのに、修だけがぽつんと一人でいます。クラスの中に雑談できる友人がいない、またはそもそも周囲から浮いているのかな、という描写です。

正義感は強い


15P。クラスの不良たちが弱いものいじめをしているところに介入して、いじめられっ子の方を助けます。

でも、バカにされる


助けた行為を不良たちから冷やかされるも、何も言い返しません……。

「ボーダー関係者」に反応

12P。これから来る転校生がボーダー関係者かも、という噂に反応します。
シンプルに、修がボーダーに絡んでいることの伏線です。

遊真に助け舟を出す

17P。転校してきた遊真は、教師から「左手の指輪を外せ」と言われます。遊真はこれを拒否し、指輪がダメなら学校をあきらめるとまで言います。
そこで修は「何か事情があるんじゃないでしょうか?」と教師に意見します。

この意見も、不良たちから冷やかされてしまいます。

改めて遊真との出会い

21P。ここはあっさりと描かれるのですが、教師が「三雲くん、空閑くんのことお願いね」と言ったため、修が遊真の世話役に。二人は握手します。本当にあっさりとしているのは、まだ二人が他人同士だからです。
その直後、修のモノローグで、遊真がボーダー関係者か気にしていることがわかります。

再び正義感を発揮するも、何もできない

23P。不良たちが遊真をからかい、修はすかさず制止しようとします。

しかしまったく効果はなく、逆にマンガ雑誌をぶつけられ、「おまえが恥ずかしいわ」とまで言われる始末。

遊真の性格に驚く

25P。やられたらやりかえす遊真。さらには、不良たちを笑顔で煽ります。
修「こいつ……意外と好戦的だ……!」
修は遊真のギャップに驚きます。この小競り合いは教師が介入して強制終了。

修と遊真の対比

27P。学校からの帰り道、修と遊真が並んで歩いています。
ここで、修と遊真の価値観がぶつかります。

修「おまえ、ああいう連中は相手にするなよ」
遊真「ほう? なんで?」
修「やり返したら事が大きくなるだろ。あれだけ恥かかせたらいまに仕返しされるぞ」
遊真「ふむ……じゃあどうすればよかったんだ?」
修「それはだから……口で注意するとか無視するとか……」
遊真「へえー! 日本だとそうなのか。いままで行ったどの国でも、やり返さなきゃやられっぱなしなのが当たり前だったけどなー」
修「……! それは……!」

修は自分が「やられっぱなし」であることを思い返し、それ以上反論できません。

読者の価値観は修に近い

もちろん考え方は人それぞれですが、一般人の考え方に近いのは修の言い分だと思います。やられたらやりかえす、という考え方では日本の学校生活ではトラブルにしかなりません。しかし遊真の意見に触れ、修は揺れます。自分は結局やられっぱなしであり、状況を変えられない事実に悩むわけです。

注目ポイント

ここでは読者を修に共感させています。読者は修の立場になり「遊真の異質さ」を体感するのです。

またまた正義感を発揮


28P。不良たちが遊真に絡んできます。ここでも修は正義感を見せ、遊真を守ろうとするのですが……。

やっぱり弱い


ページを送ったら、見事に殴られています。修の殴られっぷりが少しギャグタッチで描かれているのは、リアルめに描くと重い印象になりすぎるためだと思われます。こういうところは葦原先生ならではのセンスですね。

修と遊真がぶつかる

ケンカではなく、ここでも修と遊真の価値観がぶつかります。

修はめげません。むしろプライドを見せて不良を説得しようとしますが、蹴りを入れられてしまいます。

修は言い返せない……

対話ではありませんが、さらに修と遊真の価値観がぶつかります。
不良「(遊真に)オトモダチがピンチだぞ。助けてやれよ、ほら」
遊真「助ける? おれが? なんで?」
さらには……

修は言葉が出ません。

前半のまとめ

3回も同じパターンを繰り返しているので、修のキャラはとてもシンプルです。

描かれたのは2つの要素

正義感は強いけど、実力は弱い

この一点を、何度も見せています。しかし修は、遊真の価値観に触れることで、何も変えられない自分についての葛藤が生まれます。
そしてもうひとつ大切なことがあります。

ここまでの修は、負けっぱなし

不良たちを止められない。ケンカにも負ける。遊真にも何も言い返せない。ここまでの修はいいところ無しですが……これが最後に効いてくるわけです。

今のところそんなに魅力はない修……

正義感を振りかざすも、結局はやられてばかり。魅力あるキャラとは言いづらいところです。しかし三雲修はワールドトリガーの主人公! ここからやってくれるはずです。

修のキャラの立て方・後半

このままだと、修は主人公になれません!
どうやって主人公の要素を手に入れるのでしょうか。

ネイバーの襲撃!

遊真が不良の足を折ったところで、突然ネイバーのトリオン兵「バムスター」が襲ってきます。

ざっくり説明すると、トリオン兵とはロボット兵器のようなものです。余談ですが、トリオン兵のデザイン大好きです。
トリオン兵は、足を痛めた不良を食おうと口にくわえてしまいます。

皆が逃げようとする中、修だけが立ち向かう

遊真は不良たちに構うことなく、逃げようと言います。修にとっては、自分を散々バカにしてきた相手が、目の前で死にそうになっています。ここで、修だけがトリオン兵に向かっていきます!
「逃げようぜ」と言う遊真と、またも修がぶつかる。
そして第1話の見せ場がやってきます。

修はトリガーを起動して変身! 何やら剣のような武器でバムスターに一撃食らわせます。ここで遊真が説明セリフ。
遊真「あいつボーダーだったのか!」
修はボーダー隊員だったことが明かされます。

注目ポイント

修がボーダー隊員として変身する見せ場のシーン。しかしそれだけではありません。第1話の中で、初めて修が「勝つ」シーンなのです。
これまで遊真の価値観に対して何も言い返せなかったけれど、遊真に強く言い返しています。自分の信念を貫き通すことで、何も言えなかった自分を克服し、遊真にある意味「勝って」いるのです。

修の信念が、遊真を変える

遊真はこれまで「首を突っ込んだ修が悪い」「自分たちが助かればいい」という、シビアな考えでした。しかし、信念を貫く姿を見せられた遊真は心が動きます。バムスターに対して勝ち目の無い修を、遊真の意思で助けるのです。修の信念に対して、一目置いた遊真。これも修の勝利と言えます。

バムスター撃退のあと……

遊真は修に疑問を投げかけます。

この修のセリフに、遊真は笑顔で応えます。遊真は、修という人物を認めたのです。

最後の3Pは次回への引き

最後に遊真の秘密が明かされます。次回への引きを作って、第1話は終わり。

主人公・三雲修の魅力

改めて、修のキャラの成り立ちをまとめてみましょう。

三雲修のキャラ要素

正義感は強いけど、実力は弱い

ボーダー隊員である

危険を顧みず、信念を貫く心の強さがある

前半から、2つの要素が増えました。
いわゆる正義のヒーローだと知ることで、暑苦しいくらいの正義感も読者は納得できてしまいます。さらには、危険の中、自分をバカにした相手でも助けに行く姿。そして、言われっぱなしだった遊真に言い放つセリフ。どちらもかっこいいですよね。
さらにまとめると……

普段は頼りないけど、いざとなるとかっこいい

こう書いてしまうとベタですが、柱になっているのはド定番のヒーロー像
だからこそ修は魅力ある主人公になれるのです
しかし、よくあるヒーロー像そのままでは個性が出ません。

三雲修という主人公の新しさ

ワールドトリガーを読んでいて「オサムってちょっと普通の主人公と違うなあ」と思う方も多いのではないでしょうか。それは、ちょっと珍しい要素を足してあるからです。

弱いヒーローとしてスタート

ここが、独自性、目新しさになります。もちろん同じような弱いヒーローは他の作品にもいますが、ここまで弱いヒーローとして物語が始まるのはかなり珍しいパターン。これができるのは、強い主人公である遊真とのダブル主人公だからです!

修の魅力は「応援したくなる」

この先、修は強くなろう、成長しようと努力していきます。物語の節目で「あの修が……よくぞここまで……!」と感動できるシーンが描かれていくのです。
読者は、修の成長を見守りたくなります。修が敵と戦うときには応援したくなるはずです。

この先の修が楽しみ!

読み進めていくうちに、修のさらなる魅力が描かれていきます! ぜひぜひワールドトリガーを実際に読んでみてください!

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画像出典

「ワールドトリガー」第1巻©葦原大介/集英社
ワールドトリガー.info
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