「響 〜小説家になる方法〜」から学ぶ、キャラの作り方【シナリオ分析】

欅坂46の平手友理奈が映画初主演ということもあり、注目を浴びる映画「響 〜小説家になる方法〜」。

その原作コミックも、文芸というマイナーな題材ながらヒット作となり、現在も連載が続いています。

作品の特徴といえば、なんと言っても主人公「響」の強烈なキャラ!

そんな注目作品から、魅力あるキャラの立て方を調べてみました。

こんな作品です

小説家として圧倒的な才能を持つ少女、「響」を主人公にした人間ドラマです。

才能はあるが、絶対に自分の考えを曲げない性格の主人公は、様々なトラブルを起こし、関わる人達に変化を与えていきます。

第一話の構成

1p〜8p
◯「木蓮」編集部
出版不況とそれに悩む編集たち、後に響を見出す編集者「花井ふみ」の紹介など、物語の前提を説明していきます。
ふみが、ゴミ箱に捨てられた、響の応募原稿を拾い上げます。

9p〜15p
◯北瀬戸高校
響、登場。
幼なじみである「椿 涼太郎」との関係性や、刺々しい響の言動を見せながら、響と涼太郎が今日から高校生であることを伝えています。
新しいクラスでは誰と話すこともなく、もう周囲から浮いている響。

16p〜17p
◯「木蓮」編集部
ふみが響の原稿を夢中で読んでいます。周りの編集者たちの声掛けも耳に入らないほどです。

18p〜21p
◯北瀬戸高校
響と涼太郎が文系部に入ることに決めます。響と涼太郎の関係性が描かれます。

22p〜45p
◯北瀬戸高校・文芸部部室
ここが第一話のメインイベント! 後ほど、掘り下げます。

46p〜48p
◯「木蓮」編集者
響の原稿を読み終わったふみが、どうにかしてこの原稿を新人賞にねじ込めないかと悩みます。

注目ポイント

ここは上手い描写です。

響の小説がとんでもなくおもしろい、ということを伝えるにはどうしたら良いか?

ふみに「……すごい……傑作だ……!」と言わせてもいいのですが、この場面では、ふみは一切原稿の感想を言いません。

しかし、新人賞になんとか応募させられないか、と悩む姿で、読者は十分に「すごいおもしろい作品だったんだな」とわかります。

また、ダメ押しで、先輩から「で、どうだった? 太宰二世になれそうか?」と問われ、うっとりと「はい……」と答えさせています。

作品の感想を言わせることなく、読んでどうなってしまったかを描くことで、単なる「おもしろかった」以上の作品であると表現しているのです!

49p
◯北瀬戸高校・文芸部部室
響のモノローグで第1話は終わります。
ここも後述します。

「響」の立て方

第一話のメインシーンである、文芸部でのトラブルについて見ていきましょう。

主にこのシーンで、主人公である響のキャラを立たせています。

文芸部の部室に居座っていた不良の先輩「タカヤ」を怒らせた響。

タカヤに胸ぐらを掴まれ、
「殺すぞ……」
と凄まれるところからです。

小指をへし折る

「殺すぞ……」
と言われた響は、怯むことなく、むしろ笑顔を浮かべます。

そして、自分を締め上げようとしているタカヤの小指を、まったくためらうことなく折ります。

読者は「なんだ!? この子ヤバイ!」と驚きます。

本気で目を潰そうとする

響は近くにあったボールペンを手に取り、タカヤに向かって身構えます。
恐怖心をまったく感じさせず、ただ「相手の目を突き刺す」という殺意を向けるのです。

15才の女子高生が、ボールペン片手に、強面の不良の目を潰そうとしています。

もうかなりヤバイ子です。

タカヤはさらにすごみますが、それでも執拗に目を狙い続ける響。

ここが見せ場ということで、1ページまるまる使って描かれています。

さすがのタカヤも少し怯んだところで、涼太郎が仲裁に入ります。

ここは涼太郎の社交性の高さも見せるシーンです。

涼太郎の謝罪により、タカヤたちは部室から出ていくことにします。
やっと一件落着しそうな空気が生まれます。

さらに追い打ちをかける

しかし、その空気を響がブチ壊します。

去っていくタカヤに、響は呆れてこう言うのです。
「は……? 殺すんじゃなかったの……?」

読者は、
なんで蒸し返すの!
とツッコミたくなるわけです。

タカヤはまた怒りがこみ上げますが、不良仲間が説得します。
「落ち着け、タカヤ」
「あの女、ちょっとオカシーんだよ」
「関わんねーほうがいいよ」

タカヤは精一杯の捨て台詞を吐いて出ていきます。
「一人で死んでろ」

あきれる響

タカヤたちが去った後、響はボヤきます。
「……何、あの茶番」
「高校だってのに……バカばっかりだ!」

ここまでの響を見た読者が、
「ただ気難しいだけじゃなくて、ちょっとマトモじゃない」
と十分に感じさせるようなシーンが続きます。

このあと涼太郎が説教し、響は反発。
涼太郎は響を置いて部室から出ていきます。

響はヤバイ子だけど……

読者のほとんどが、こう感じているはずです。
この子はヤバイ子なんだ」。
ちょっと常軌を逸している、と。

しかし、これでは、
「ただのヤバイ奴」でしかありません。

物語の主人公なのですから、魅力的なキャラでなくてはいけないのです。

ヤバイを魅力に変える

タカヤとのトラブルのあと、響は思い悩みます。

思い悩む響

部室に一人残った、響の心の声が描かれます。
「バカと話しても仕方ないから、クラスの奴らを話そうとしなかった」
「さっきの連中も、先に手を出してきたのは向こうだし」
「殺すって言われたから、殺そうとした……」
「何もおかしなことをしてないハズなのに、どうしていつもこうなるんだろう」
「どうしていつも、一人に……」

響には、響の信念があった

彼女の行動には、彼女なり理由があったのです。

クラスメイトと話さなかったのは、彼らがバカだから。

暴力を先に振るったのは向こうで、私は応戦しただけ。

殺すと言われたから、私も本気で殺そうとした。

これらを響は
「何もおかしなことをしてない」
と言い切っています。

行動の良し悪しは置いておいて、響には響の信念があり、それを徹底して貫いていたのです。

このモノローグで、
響の見え方が少し変わります。

信念は貫くけど、疑問も生まれるわけです。
そして、孤独になることを完全に受け入れているわけでもありません。
響も孤独になるのはイヤなのです。

トラブルの前に、涼太郎と同じクラスになって安心していたり、涼太郎が違う部活動に入ると言い出して不安になる姿も描かれています。

あれだけのトラブルを起こしたあとに、平気でいるわけではなく、葛藤し、不安を覚えている。

そんな側面を見せられることで、響という少女の強さ、危うさが浮き彫りになります。

最後のモノローグ

さらに、最後のページでは、こう思っています。
「私が、おかしいのかな……」

響は、「自分がマトモじゃないんじゃないか?」という疑問も、きちんと抱いているのです。

この視点を持っていると知った読者は、
ただのヤバイ奴じゃないんだ
と思います。

そして、「私っておかしいのかな?」と不安になること自体は、普遍的な悩みであり、思春期世代であれば皆どこかで感じているものです。

このシーンがあることで、読者と、響の距離がグッと縮まります。

響というキャラの魅力

第1話では、2つの魅力が描かれています。

自分の信念を貫く強さ

恐怖に負けることなく、自分が信じることはやり通してしまう強さがあります。

その信念が、常軌を逸した行動であっても、彼女にはまったく構わないのです。

私が正しいと思ったことを、私はやる。

これは普通の人には、なかなかできることではありません。

個人的にはこれを「ディオの法則」と読んでいます。

ジョジョの奇妙な冒険、第1部に出てくる名セリフ。

「さすがディオ! おれたちにできない事を平然とやってのける そこにシビれる! あこがれるゥ!」
というジョジョ界隈では有名なセリフです。

これは、キャラの魅力の、真理を突いています。

一般人ができないことを平然とやってしまうキャラに、おれたち一般人は憧れるのです!

自分がおかしいのか、と思う揺らぎ

信念を貫いた行動した後、「自分は正しいことをした!」と言い切りません。

むしろ響は孤独を恐れており、信念を貫いたのに、孤独になってしまうことに対して、迷いを感じています。

前述のとおり、
私っておかしいのかな?
孤独になりたくない
というのは、誰でも思うことであり、
共感しやすい悩みです。

響にそういった弱い部分を持たせることで、
読者から見たときに、「信念を貫くだけのモンスター」で終わっていないのです。

「自分に近いところもある、ちょっと変わった人間なんだ」と思わせる作りになっています。

ここがポイント

・信念を貫く強さに憧れる

・「自分がおかしいのかも」「孤独は嫌」という弱さに共感する

ふたつの面を描くことによって、
響を魅力的なキャラにしているのです!

試し読み&コミックス情報

第1巻が試し読みできます。こちらの記事の内容を踏まえながら読むと、響というキャラを丁寧に立たせているのがわかっていただける、かもしれません。

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<参考画像 出典>
「響〜小説家になる方法〜」1巻©柳本光晴/小学館
「ジョジョの奇妙な冒険」1巻©荒木飛呂彦/集英社