朝ドラ「まんぷく」第1話から学ぶ、愛されキャラの作り方【シナリオ分析】

2018-10-22

堅実なシナリオで、好評の朝ドラ「まんぷく」。

半年間という長い期間、しかも週6日放送のため、主人公のキャラクターは視聴者に愛されるものでなければいけません。
第3週を放送中の現在、主人公の「福子」は、視聴者のハートをがっちり掴んでいると思います!

本作の脚本家は、「救命病棟24時」「HERO」「ガリレオ」、大河ドラマでは「龍馬伝」を手がけた福田靖氏。
第1話の15分だけでも、しっかりと福子の魅了を描いています。

今回もキャラの立て方を分析してみましょう。

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「まんぷく」はこんなお話

公式サイトの紹介はこんな内容です。

今や私たちの生活に欠かせないものとなった「インスタントラーメン」を生み出した夫婦の知られざる物語を描きます。何度も失敗してはどん底から立ち上がる“敗者復活戦”を繰り返した末、二人は世紀の大発明へとたどりつく。人生大逆転の成功物語です。
出典:連続テレビ小説「まんぷく」|NHKオンライン

チキンラーメンやカップヌードルを開発した日清食品創業者の安藤百福氏と、その妻をモデルにしていますが、大胆に再構成したフィクションとしてのオリジナルドラマです。
安藤百福をモデルとしたのが、長谷川博己演じる「立花 萬平」。彼の妻となるのが本作の主人公、安藤サクラ演じる「今井 福子」です。

朝ドラに求められる愛されキャラ

前述のとおり、朝ドラの主人公は多くの人から愛されるキャラクターが理想です。

愛されるキャラに必要な要素

ずばり、この二つです。

好印象

同情

印象が良いだけでなく、なんだか放っておけない、同情を引くところもある。
そんな主人公は、観客から愛されます。

まんぷくの第1話では、さっそく主人公である福子の好印象ポイントと同情ポイントがどんどん出てきます。
シナリオを振り返りながら見ていきましょう。
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すてき!と言える福子

物語は昭和13年、大阪の洋裁店から始まります。

洋裁店ではしゃぐ

◯洋裁店
就職祝いに、姉の「咲」から、ワンピースをプレゼントされることになった福子。
いろいろなワンピースの完成図見て、感激しています。
福子「すてき! でもこれも……!」

無邪気な笑顔で、「すてき!」と言う姿がいきなり登場します。
18才の設定なので、キャッキャとはしゃいでいるのも、あえての芝居でしょう。

素直にきれいなものをきれいと言える(好印象)

お仕事で疲れる福子

慌てふためく新人

高級ホテルに就職した福子は、電話交換手として働き始めます。

◯電話交換室
ブザーの音にびっくりする福子。
福子「うわーっ! うわっ!」
先輩「早く出る!」
福子「大阪東洋ホテルでございます!」
福子は慌てたあげく敬語を使わず「どちら様でしたっけ?」と言ってしまい、先輩から怒られます。

先輩を演じるのは、地元大阪で人気の吉本芸人「なるみ」さんです。
コテコテの関西弁で、ビシビシと注意していきます。
慣れない仕事とは言え、福子はテンパってしまってどんどんミスを連発。

仕事がうまくいかない(同情)

自分の容姿を気にする

◯休憩室
福子が、ちりめんじゃこの乗ったごはんのお弁当を食べています。
福子「疲れた……」
かなりお疲れの様子。

ちりめんじゃこのお弁当は今後もよく登場する小道具です。
さすがに疲れている福子。
仕事で怒られてぐったり、というのは普遍的な出来事なので共感する人も多いはずです。

仕事で怒られて疲れる(同情)

先輩の調理師に「新入りか」と声をかけられると、すぐさま立ち上がって背筋を伸ばし、
福子「今井福子と申します。よろしくお願いします」

ひどく疲れて、しかも食事中だったのに、真っ先に立ち上がり、先輩に対してしっかり頭を下げています。礼儀をわきまえていることがわかります。

とても礼儀正しい(好印象)

先輩調理師との会話が続きます。
先輩「職場どこ?」
福子「電話交換室です」
先輩「そうやろうな。新入りは、べっぴんは客と顔を合わせる部署。そうやない子は、裏方に回されるんや」
福子「ん? ん?」

ここで、野呂さん(登場するときは、福子に缶詰を差し入れする先輩)も登場してフォローはしてくれるものの……。自分の顔に触れる福子。気になるみたいです。

先輩からの「そうやない子」が気になる(同情)

◯フロント
橋本マナミ演じる、フロント係の保科恵が働いている。
恵はいわゆる「べっぴん」。
脇から保科を見つめて、自分の顔をつまむ福子。

先輩の保科さんは容姿端麗。べっぴんのフロント係を見て、思わず自分の顔をむにゅっとつまんでしまいます。べっびんじゃないのかも、と言われたことを相当気にしているようですね……。

べっぴんやない、と言われたことをかなり気にする(同情)
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友達に愛される福子

福子の友達が登場します。友達のキャラ紹介であるとともに、友達に福子を語らせることによって、福子の魅力をさらに見せます。

◯屋台
福子が、女学校時代の女友達二人とラーメンを食べています。
福子は友達に相談します。
福子「私って器量が悪いん? うちはべっぴんじゃない子が電話交換手になるんやて」
友達A「そんなん気にするなんて福ちゃんらしくないよ」
友達B「うちはお嬢様学校だったけど、福ちゃんだけは貧乏だったやない?」
福子「貧乏やった」
友達B「平気やったでしょ?」
福子「平気やった」
〜回想〜
友達A「今日もちりめんじゃこのお弁当?」
友達B「毎日同じで飽きひんの?」
福子「おかげで骨は丈夫やの」
〜回想終〜

ものすごいポジティブな発言です。貧乏で、毎日同じ内容のお弁当。周りはみんなお金持ちのお嬢様。それでも福子はいじけるわけでもなく、さらりとポジティブに受け止めています。
鈍感とも取れるので知性を疑う場面にもなりえますが、そのあたりは第2話以降でしっかりフォローされていきます。

前向きに物事を考える(好印象)

友達は励まします。
友達A「そういう福ちゃんだから私らは大好きなの」
友達B「器量なんて気にせえへん」
福子「そやね〜わかった。気にせえへ〜ん」
ぱあっと晴れやかな笑顔を見せる福子。

重ねてポジティブな面を見せてくれます。
あれだけ疲れて落ち込んでいたのに、友達からの励ましですぐに切り替わり、「気にせえへ〜ん」と言ってのけます。ここも知性云々の話になりますが、前述のとおりフォローがあります。

立ち直るのが早い(好印象)
友達に愛されている(好印象)

おいしい〜!

福子は屋台のラーメンをすすると、笑顔いっぱい。
福子「わあ〜! これがラーメン!」
福子「う〜ん! おいしい!」

ここは安藤サクラの演技力の力が大きいところですが、本当に美味しそうに食べます! この特徴は、萬平との関係にも繋がってくるのです。

ごはんを美味しそうに食べる(好印象)

愛されポイントのまとめ

まとめましょう。

好印象ポイント

・素敵なものには「すてき!」、おいしいものには「おいしい!」と言える純粋さ
・友達に愛されている

同情ポイント

・自分の容姿をからかわれて落ち込む
・慣れない仕事で四苦八苦する

観客の心理は……

「福ちゃんかわいらしい」
「見てて気持ちがいい」
「なんだか放っておけない感じだよね」
という印象が生まれるように練られています。
そういった感想を引き出すことによって愛されキャラが立ってくるのです!

第2話からはさらに……

第1話では出てこない新たな魅力も、どんどん描かれていきます。
おおよそ第4話までが、福子のキャラを立てるために使われています。

続きます

第1話だけでは、ちょっとぼんやりしてて頼りない子という印象も強いですが、第2話以降ではさらに違う側面を描き、福子のキャラが厚みを増していきます。

というわけで「まんぷく」のシナリオ分析は続きます!