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「ワールドトリガー」から学ぶ、キャラの作り方【空閑遊真 編】【シナリオ分析】

少年ジャンプの人気SFアクションマンガ「ワールドトリガー」。
連載再開を祝して、キャラの作り方を解説をしています!

前回の【三雲修 編】に引き続き、今回は本作の主人公の一人空閑 遊真」のキャラの作り方を、漫画版の第1話から学びます。

第1話の大まかな構成や、ワールドトリガーが複数主人公の物語であることなどは【三雲修 編】で紹介しているので、そちらをご覧ください。

まぎれも無く、ワールドトリガーの主人公の中の主人公! ユーマの魅力を付け方を解説します。

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遊真のキャラの立て方・初登場シーン

まずはシナリオのテクニックから説明します。

八百屋は八百屋に立たせる

キャラクターが初登場するシーンでは、キャラの個性が出る状況を作り、そこにキャラを立たせます。
例えば「元気な八百屋」のキャラを出すのに、八百屋がカフェでコーヒーを飲むシーンや、布団から目が覚めるシーンを描くのは遠回り。八百屋の店頭で威勢良く大根を売っている姿を描いたほうが、読者には「あ、こういうキャラなんだな」と早く伝わります。
では、「ワールドトリガー」の第1話、空閑遊真の初登場シーン。どんな場面に立たせているのでしょうか?

車に轢かれたのに無傷

P.16
思いっきり車にはねられたのに、平気そうにしている学生服の少年。
はねた車のほうはベコベコに壊れてしまっています。
もうこれを見ただけで「この子、普通じゃない!」と思わされますよね。それと同時に「なぜ無事なんだろう?」という謎も与えています。

キャラに名乗らせるテクニック

作家としては、できるだけ早く読者にキャラの名前を伝えたいのが普通です。自然に紹介する方法はいくつかありますが、P.17で警官が名前を尋ねて名乗りを済ませています。

P.17
警察官「名前と住所を教えてくれるかな?」
遊真「空閑 遊真、クガ・ユーマ」

マンガのテクニックもついでに解説すると、この名乗りのコマで初めて遊真の顔が描かれます。あえて顔を隠して描き、名乗りながら顔のアップ。これによって、読者は「これがメインキャラなんだな」と自然に理解します。

謎のロボットも一緒

P.18
固い口調で話すロボットと会話しています。
ここでも読者に「何だろう、これは?」という謎を与えています。
会話の内容は、ロボットは「レプリカ」と呼ばれていること、レプリカのお固い口調、レプリカは遊真に注意する立場であることなど、多くのことを伝えています。

カギとなるセリフ

遊真「トリガー使っていい?」
レプリカ「それを決めるのは私ではない、ユーマ自身だ」
このやりとりは伏線であり、かつ一種の決めゼリフになっていきます。
この時点では「トリガーって何?」という謎も与えています。
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遊真のキャラの立て方・中学校にて

中学校に到着した遊真。どんどんイベントが起きます。

日本の文化をよくしらない

P.19
遊真「ほんとにみんな同じ服着てるぞ……」

学校の制服を見て驚いています。

背は低いですが15才

P.20
自己紹介させることで、さらに追加情報がわかります。ここは特に謎として出しているわけではありませんが、後々から振り返るとちょっとした伏線にもなっています。
ちなみに「遅れてもうしわけない!」のような、ゆるキャラが礼儀正しいという要素は、葦原マンガの特徴です。

不気味な眼差し

P.22
教師から左手の指輪を外すように言われますが、断る遊真。さらに教師に外すよう迫られると、学校をあきらめるとまで言い出します。

遊真「じゃあ学校はあきめます……おじゃましました……」

P.23
もう一人の主人公・修が、何か事情があるのでは、と教師に意見。
遊真は、指輪は親の形見だと説明しますが、教師は信じません。
P.24
遊真は教師を見据えてこう言います。

遊真「? 本当です。親の形見です」

教師は得体の知れない恐怖を感じ、冷や汗までかきます。遊真の言い分を聞き入れ、遊真から逃げるように教室から立ち去ります。
遊真はただの明るいキャラではなく、人に恐怖を与える何かを抱いているようです。

不良に反撃。「意外と好戦的」

P.24〜30
不良たちに紙くずをぶつけられ、これが日本式のアイサツだとからかわれます。
遊真は紙くずを弾丸のように飛ばして反撃して、不良たちを煽ります。

遊真「おや? あいさつでは?(ニコリ)」

それを見た修のモノローグは、読者の声と被ります。

修「こいつ……意外と好戦的だ……!」

ここは修の思ったとおり、のほほんと明るいキャラと思いきや……という意外性を見せています。

決めゼリフ

P.30
主人公には欲しい要素、口癖と決めゼリフ。

遊真「つまんないウソつくねオマエ」

絡んできた不良に対して言い放ちます。「つまんないウソつくね」は今後かなりの頻度で出てきます。

修との価値観の対比

P.30〜31
こちらは【三雲修 編】でも触れましたが、遊真のキャラの作り方として説明します。
遊真と修、お互いが価値観をぶつけあいますが、最終的には修は言い返せません。

憧れの「やられたらやりかえす」

読者の常識は修に近いはずです。読者の思う正論に、遊真はキョトンとします。
そして、遊真は自分のスタンスを語ります。
やり返せたらいいのに、やられっぱなしはもちろん嫌だ、と誰しも思うのですが、遊真のようにやりかえすことは普通はできません。
普通はできないことを、遊真はやってくれます。ここに、読者は「憧れ」を抱くのです。
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遊真のキャラの立て方・警戒区域

P.32
再び不良たちと小競り合いとなります。不良たちの狙いは遊真ですが、修は正義感から遊真を守ろうとついていきます。

「冷たい」と言われ戸惑う

P.33
修は遊真を助けようとしますが、逆にボコボコにされる始末……。
自分を助けようとする修に対して、遊真はこんな言葉を言い放ちます。

P.35
遊真「なんで? メガネくんが自分から首突っ込んできたんだから、自分でなんとかしなきゃ」

不良たちにも「冷たい」「鬼」と言われ、困惑する遊真。

行き過ぎた合理性

遊真の考え方は、徹底した現実主義、自己責任主義、自分自身の損得だけで判断しています。とても合理的なのですが、あまりにも合理的すぎるため、一般人とかけ離れてしまっています。なぜ遊真がそんな考え方になったかは、今後の展開で明かされます。

修と違って、強い!

P.36〜37
不良に殴りかかられますが、軽くあしらって逆に一撃食らわせます。すごい痛そう。
そしてさらに不良を煽ります。

遊真「……やっとおれの番? それとももしかして……もうおわり?」

冷酷です。修はまったくできなかったことを、簡単にやってしまう遊真。二人はまったく真逆のタイプと言えます。

修の信念を見て変化する遊真

P.40〜47
突如現れたネイバーのトリオン兵。僕が不良を助けたいという理由だけで、修はトリオン兵に立ち向かっていきます。しかし、なかなか歯が立ちません。
遊真は、修のしていることが不合理でおかしいことだと思いつつも、修の信念に心を動かされます。またここでは序盤のセリフで出た「トリガー」がどんなものか明かされます。

ここぞの場面で伏線回収

P.48
序盤に出てきたセリフが再び。

遊真「トリガー使っていい?」
レプリカ「それを決めるのは私ではない、ユーマ自身だ」

遊真は自分の能力を使って修を助けます。ここのアクションシーンはとてもかっこいい! 文章で説明してもつまらなくなるだけなので、ぜひマンガをご覧ください。

不合理な修を認める

P.55〜56
今まで「メガネくん」と読んでいた修のことを、「オサム」と呼ぶようになります。
修との出会いを通じて、遊真の考えに変化が起き、修のことを見直します。

最後にサプライズ

最後は、遊真に関するサプライズがあり、次回への引きを作って第1話は終わります。

主人公・遊真の魅力

第1話で描かれた、遊真の魅力をまとめます。

ゆるいけど礼儀正しい

好印象です。

修(読者)がやれないことをやってくれる

スカっとします。

戦闘シーンでもクール

あたふたしないのはカッコいい。

強い! 技がカッコいい!

アクションシーンは本当に見事です。

修を助けるヒーロー

修とは別タイプ、実力が伴ったヒーローです。

修との出会いによって、遊真はヒーローになる

遊真は元々、関係ない誰かを助けるようなことはしません。ただ強いだけです。しかし、修から影響を受けたことで、最初は見捨てていた修を最後は助けます。修との出会いにより、ピンチを救うヒーローとなるのです!

遊真はスタンダードタイプのヒーロー

遊真は修と違い、最初からかなりの実力者として描かれています。いざとなったら強いヒーローが遊真です。しかし、ただ強いだけでは魅力になりません。

ヒーローには弱点がある

ヒーローには必ず弱点が設定されます。遊真の場合は、誰かを守りつつ戦わなけれればいけないなど、ハンデが発生したりします。そうやってハラハラ感を上手く演出しているのです。

バックストーリーで魅力が増す遊真

話が進むにつれ、今回提示された謎が明らかになったり、遊真のこれまでのストーリーが明かされます。遊真の現実主義になった理由や、背負っている事情を知ると、遊真の活躍をもっともっと見たくなるはずです! ぜひこの続きも読んでみてください。

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